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藤井 浩(准教授) 分子研リポート2008 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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研究領域の現状 249

藤 井   浩(准教授) (1998 年 3 月 1 日着任)

A -1) 専門領域:生物無機化学,物理化学

A -2) 研究課題:

a) 酸化反応に関与する金属酵素反応中間体モデル錯体の合成 b) 亜硝酸還元酵素の反応機構の研究

c) 小分子をプローブとした金属酵素の活性中心の構造と機能の相関

A -3) 研究活動の概略と主な成果

a) 生体内で酸化反応に関与する金属酵素は,その反応中に高酸化状態の反応中間体を生成する。この高酸化状態の反 応中間体は,酵素反応を制御するキーとなる中間体であるが,不安定なため詳細が明らかでない。また同様な反応 中間体は,金属錯体を触媒として用いる酸化反応中にも存在すると考えられている。酸化反応に関わる金属酵素の 機能制御機構を解明するため,高酸化反応中間体のモデル錯体を合成し,電子構造と反応性の関わりを研究した。 オキソ鉄4価ポルフィリンπ カチオンラジカル錯体を合成し,軸位に配位する配位子の効果を研究した。イミダゾー ルやフェノーレートを軸配位子としてもつ錯体の反応性が従来の錯体の反応性より数百倍増加することを見出した。 また,不斉酸化能を有するマンガン3価サレン錯体の反応選択性の機構を研究した。マンガン3価サレン状態では, 不斉を誘起するような構造をとらないが,マンガン4価サレン錯体への酸化に伴い不斉を誘起できる構造に変化す ることを見出した。電子構造との関わりを研究した結果,軸配位子の結合長と側鎖との立体的反発により構造変化 が誘起されていることを明らかにした。

b) 地中のバクテリアの中には,嫌気条件で硝酸イオンを窒素に還元する一連の酵素が存在する。これらの過程で,亜 硝酸イオンを一酸化窒素に還元する過程を担う酵素が亜硝酸還元酵素である。銅イオンを活性中心にもつ本酵素の 反応機構を反応中間体モデル錯体から研究した。イミダゾール基,ピラゾール基,アミンを配位子にもつ銅1価亜硝 酸錯体を合成し,反応性に違いを検討した。その結果,酵素と同じ配位子であるイミダゾールが最も反応を加速す ることを明らかにした。電子構造との関わりを研究した結果,配位子からの電子供与性がプロトン化の速度を制御す ることを明らかにした。

c) 金属酵素と強く結合する小分子をプローブとした構造・機能測定法の開発を行った。ペルオキシダーゼの活性部位 の構造と機能の関わりを解明するため,種々のペルオキシダーゼ - シアン体の

13

C ,

15

N NMR を測定した。その結果, すべてのペルオキシダーゼが配位した過酸化水素と強い水素結合を作る仕組みをもつこと,軸配位子からの電子供 与性が種類により変化し,さらにこの効果が反応中間体の生成速度を制御していることを明らかにした。

B -1) 学術論文

M. KUJIME, C. IZUMI, M. TOMURA, M. HADA and H. FUJII, “Effect of a Tridentate Ligand on the Structure, Electronic

Structure, and Reactivity of the Copper(I) Nitrite Complex: Role of the Conserved Three-Histidine Ligand Environment of the Type-2 Copper Site in Copper-Containing Nitrite Reductases,” J. Am. Chem. Soc. 130, 6088–6098 (2008).

T. KURAHASHI and H. FUJII, “Chiral Distortion in MnIV(salen)(N3)2 from Jacobsen’s Catalyst as a Conformation Model for Enantioselective Reactions,” Inorg. Chem. 47, 7559–7567 (2008).

(2)

250 研究領域の現状

T. KURAHASHI, A. KIKUCHI, T. TOSHA, Y. SHIRO, T. KITAGAWA and H. FUJII, “Transient Intermediates from

Mn(salen) with Sterically-Hindered Mesityl Groups: Interconversion between MnIV-Phenolate and MnIII-Phenoxyl Radical as an Origin for Unique Reactivity,” Inorg. Chem. 47, 1674–1686 (2008).

B -3) 総説,著書

城 宜嗣,藤井 浩 , 「金属酵素の反応中間体の電子状態・構造解析」, 固体物理 43(11), 7–18 (2008).

B -4) 招待講演

H. FUJII, “Role of Highly Conserved Three-Histidines Ligand Environment of Type-2 Cu Site in Cu Nitrite Reductases,” The

1st CMD International Symposium, Seoul (Korea), May 2008.

H. FUJII, “Role of Highly Conserved Three-Histidines Ligand Environment of Type-2 Cu Site in Cu Nitrite Reductases,” International Symposium on Picobiology, Hyogo (Japan), March 2008.

B -6) 受賞,表彰

高橋昭博 , 第41回酸化反応討論会ポスター賞 (2008).

B -8) 大学での講義,客員

兵庫県立大学大学院生命理学研究科 , 客員准教授 , 2007年 2月– .

B -10) 競争的資金

奨励研究 (A ), 「ヘム酵素の軸配位子が多様な酵素機能を制御する機構の解明」, 藤井 浩 (1997年 –1999年 ).

上原記念生命科学財団研究奨励金 , 「ヘムオキシゲナーゼにおける反応特異性およびヘム代謝機構の研究」, 藤井 浩 (1999 年 ).

重点領域研究(公募研究)「生体金属分子科学」「チ, トクロームc酸化酵素反応中間体モデル錯体の構築と反応機構の研究」, 藤井 浩 (1997年 –1998年 ).

重点領域研究(公募研究)「生体金属分子科学」, 「17O- N M R による銅−酸素錯体の配位した酸素の電子構造と反応性の研 究」, 藤井 浩 (1999年 ).

内藤財団科学奨励金 , 「ヘムオキシゲナーゼによる位置特異的ヘム代謝機構の解明」, 藤井 浩 (2000年 ).

基盤研究 (C ), 「合成ヘムとミオグロビン変異体による亜硝酸還元酵素モデルの構築と反応機構の研究」, 藤井 浩 (2000 年 – 2002 年 ).

基盤研究 (B), 「単核非ヘム酵素反応中間体としての高酸化オキソ錯体の合成と反応性の研究」, 藤井 浩 (2002 年 –2004年 ). 大幸財団 海外学術交流助成金 , 「第3回ポルフィリンとフタロシアニンに関する国際会議での研究発表」, 藤井 浩 (2004 年 ).

基盤研究 (B), 「立体構造にもとづく基質結合サイトの再構築による酵素反応選択性の制御」, 藤井 浩 (2004年 –2007年 ). 特定領域研究(公募研究)「配位空間」, 「金属酵素のナノ反応空間における基質の配向および反応選択性の制御」, 藤井 浩 (2005年 –2006年 ).

(3)

研究領域の現状 251 C ) 研究活動の課題と展望

生体内の金属酵素の構造と機能の関わりを,酵素反応中間体の電子構造から研究している。金属酵素の機能をより深く理 解するためには,反応中間体の電子状態だけでなく,それを取り囲むタンパク質の反応場の機能を解明することも重要であ ると考える。これまでの基礎研究で取得した知見や手法をさらに発展させて,酵素,タンパクのつくる反応場の特質と反応 性の関係を解明していきたいと考える。また,これらの研究を通して得られた知見を基に,酵素機能変換法の新概念を確立 できるよう研究を進めたいと考える。

参照

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